外断熱工法のメリットと
これからの可能性とは?


  ここ数年、外断熱工法による家づくりが注目を浴びている。
高気密・高断熱で省エネを実現し、健康にもいいということで、
住宅雑誌や新聞にも取り上げられる回数が増えているが、
果たして本格的に普及するのだろうか。
外断熱工法の基礎的な特徴を整理しつつ、これからの可能性を探ってみた。

気密ラインが構造体の内か外かで断熱法が二分される

 建築物の断熱工法は「内断熱」と「外断熱」に大きく分けられる。
厳密には、コンクリート造のような蓄熱体で断熱する場合に「内断熱」または「外断熱」を使い、木造住宅など蓄熱体が存在しないときは「充填断熱(内断熱)」または「外張断熱(外断熱)」と言う。
 内断熱と外断熱の違いを簡単に言うと、前者は断熱材を構造体の内側に設置し、後者は断熱材を構造体の外側に設置するという点だ(図1)。コンクリート造と木造、それぞれの工法で細部に相違点はあるが、基本的には気密ラインが構造体の内側か外側かで分けられる。図1・2を参考にしながら、内断熱と外断熱の違いをもう少し詳しく見てみよう。
 内断熱の場合、木造住宅では、柱などの構造材の間にグラスウールやロックウールなど繊維系断熱材を詰め込み、室内側に防湿フィルムと内装材を貼り、構造材の外側は外装材で覆う。このとき、構造材と外装材の間には通気層を設けないのが一般的だ。マンションなどコンクリート造の場合では、構造部分の内側に断熱材を吹き付けるか、断熱ボードを貼り付けている
 外断熱は、木造住宅を例にとると、柱など構造体の外側にポリウレタンやポリスチレンなどの発泡プラスチック系の断熱材を貼り、外側に通帰巣を設けて外装材で覆う。内側(室内側)は内装材を貼った大壁にするのが一般的だ。また、構造材の外側に気密ラインを作るため、断熱材を土中の基礎部分まで埋め込み、屋根のラインに沿って施工する。つまり外断熱では、建物全体を断熱材ですっぽり包む形になり、壁の中、床下、小屋裏も一つの室内空間となるのだ。これが、、外断熱住宅が魔法瓶にたとえられる所以だ。なお、気密性が高いので外断熱を導入しているハウスメーカーのプランでは、計画換気を取り入れる場合が多い。
 外断熱工法は欧州ではポピュラーな工法で、オイルショックの時期には日本でも実用化が検討されたことがあるという。研究を推進していた中の一人、お茶の水女子大学生活科学部の田中辰明教授は次のように当時を振り返る。
 「石油ショック後に、省エネルギーを進めなければいけないということになって、当時の通産省が太陽熱を利用して冷暖房・給湯を行うという『サンシャイン計画』を進めました。私はその計画に参加したのですが、建物も省エネルギー的でなければいけないだろうということで、当時ドイツで主流だった外断熱工法で建てたのです」
 田中教授が考えたものは、コンクリート造の住宅に、厚さ10cmの発泡スチレンの断熱材を貼り、その上に4mmのモルタルを塗って、ひび割れ防止のためにグラスファイバーメッシュを入れ、外装材を貼ったものだったという。
 「当時、建物躯体の外側に可燃性の断熱材を貼るのは消防法上好ましくないとされ、2cm以上の不燃材を貼るように指導されたのです。それでは完全な外断熱ではなくなり、モルタルにひび割れが入りやすくなるというデメリットがありました。また、2cm以上の厚みのある不燃材を保持することはコストを上昇させ、とても普及できないだろうということで、我々は研究を止めたのです。ただ研究を続けて実用化した会社もあったのですが、結局、外壁がひび割れするなどの事故もあり、日本では外断熱はダメだという風潮になってしまったのです」
 そんな外断熱工法が、なぜここに来て急に注目され始めたかというと、外断熱工法が持っている特徴が、改めて見直されたからにほかならない。

内部結露を防ぐ外断熱はカビやダニの発生を防ぐ

 外断熱工法の特徴の一つは、内断熱に比べて高断熱・高気密化が実現できやすい点が挙げられる。
 内断熱の木造住宅では構造体の間に断熱材を充填するため、柱・梁など断熱材を入れられない部分が生まれてしまう。木材にはある程度の断熱性能はあるが、断熱材と比べると断熱力は劣る。また、電気コンセントや配管部分では、断熱材が押し分けられて施工されるため、その部分だけ断熱層が薄くなったり欠如することが起こる。さらに、柱など構造体の間に断熱材を充填する際にも、どうしてもすき間が残る。
 こうしたことから、結果的に柱や梁、電気コンセントや配管部分などを通じて、内側の熱と外側の熱が行き来する現象が起きてしまう。これを「熱橋(ヒートブリッジ)」と言うが、この存在によって断熱ラインが途切れるので、全体をくまなく断熱材で覆った場合よりも、断熱性と気密性が落ちてしまうのだ。内断熱のコンクリート造住宅の場合も、構造体のコンクリートが外気温の影響を受けて温度が上下しやすくなり、また熱橋が生じやすく、結露も生じやすくなる。
 断熱性や気密性が悪くなって不都合なことは、冷暖房で消費するエネルギーが増える点だ。電気代やガス代などが高くつくことはもちろんだが、結果的に温暖化現象を進め、地球環境に負荷をかけることになる。国土交通省が平成11年に、いわゆる「次世代エネルギー基準」を告示したのも、住まいの断熱化・高気密化を促進し、冷暖房などのエネルギー消費を抑えて地球温暖化などの環境問題を解消しようという意図からだ。こうした社会的要請が、外断熱が注目される理由のひとつであることは確かだ。
 しかし、いま一般ユーザーの間で外断熱が話題になっているのは、不十分な断熱による結露がもとでカビやダニが発生し、それが健康に悪影響を及ぼすということが、新聞やテレビなどで報道されたことが大きい。
 近年、アトピー性皮膚炎をはじめ、鼻炎や喘息などアレルギー性疾患の罹患者の増加が社会問題になっている。こうしたアレルギー性疾患は、いくつもの要因(アレルゲン)が重なりあって発生するが、その一つとして指摘されているのが、室内に発生するカビやダニの存在なのだ。
 「住宅が高気密・高断熱化した結果、内断熱で施工されたコンクリート住宅で、結露が原因となったカビの被害が多く発生しました。病弱な人にとってカビは健康を損なう原因となりますし、アレルゲンでもあります。何よりもカビが発生することで、それを餌とするダニが集まることが問題です。ダニは生きていても死骸になっても、またその糞までもがアレルゲンとなることは証明されています」(田中教授)
 家で生活していると、調理や入浴時、人の体などから常に水蒸気が発生している。建物の断熱では、室内と屋外を遮断して熱の流動を止めることはもちろん大事だが、こうした水蒸気の移動も忘れてはならない。
 室温が高ければ、空気は多くの水蒸気を含むことができるが、室温が下がると結露になる。例えば外の温度が室温より低い場合、熱橋が外気によって冷やされ、そこに結露が生じることになる。つまり、前述したように、内断熱では熱橋が発生しやすく、それだけ結露が起こる可能性が高くなるのだ。
 窓についた水滴ならふき取ればいいが、内装の内側や断熱材など目に見えない部分に結露が発生すると自然乾燥を待つしかない。ところが最近の住宅はある程度気密性が高くなったため、いったん結露が起こると水分が乾燥するだけのすき間がなく、ジメジメした状態が長く続きカビが発生しやすい状態となる。しかも結露が発生すると断熱材の断熱性能が低下してしまうのも大きな問題となる。
 その点、外断熱の場合は断熱材が構造体の外側にあり、しかも外壁との間に空気層を設けるので、結露が発生する可能性が大幅に低減される。これが、外断熱工法が持つもう一つの大きな特徴だ。
 それ以外の外断熱の特徴として、田中教授は次のような点を挙げる。
 「断熱材が建物躯体の外側にあるので、外気温度や日射の変動から保護されてコンクリートそのものが伸び縮みすることがなく、建物躯体にヒビが入らないので建物の寿命が延びます。また、とくにコンクリート造の場合、熱容量が室内側に入るので、暖房が切れても急激に室温が変化せず、快適性に富むことも特徴の一つです。さらに、既存の建物に断熱改修を行いやすいという利点があります」

コストアップの抑制と施工技術の確立が急務!?

 こうして見てくると、内断熱よりも外断熱のほうがメリットが大きいように思えてくる。ただ、外断熱住宅の弱点もある。その一つが建設コストの問題だ。技術的に見たときに、外断熱用の部材の供給が少なかったり、一般の住宅以上に高気密・高性能化を図ることで生じるコストアップをどうクリアするかが課題である。
 また、バルコニーやベランダの断熱を、十分に考慮しなければならないという。
 「バルコニーを外付けにすると、金属部分が躯体内に入ってきます。金属は熱橋ですから、冬は冷たい外気が室内に伝わって結露の元になります。バルコニーの断熱はマンションの場合にも大きな課題で、コスト的にもデザイン的にも、まだまだ研究の余地が大きく、実用化はこれからだと思う。
 デザインということでは、外断熱の効果を十分に享受するには、建物の凹凸を極力無くすことがいいとされる。凹凸があると接合面の断熱が難しくなるからだ。つまり、建物の外観プランは多少なりとも限定されることになる。また、間取り面でも配慮が求められる。
 外断熱は建物全体を断熱材で囲うため、室内の温度変化が少ない。結果として、部屋を移動したときに起こるヒートショックが起こりにくいのが利点だが、細かく部屋を仕切ってしまうような間取りでは、外断熱の良さが十分に活かせないこともある。本来は吹き抜けやオープンスペースに向いているのだ。ただ、家族のプライバシーの面も考慮し、冷暖房システムも含めた総合的なプランニングが設計者に求められるだろう。
 ちなみに、外断熱住宅は密閉性が高いので、暖房システムも給排気が確実に行われるものや、床暖房、遠赤外線や輻射熱暖房などのほうが適している。
 もう1点、外断熱効果に差が出ないという意見も多い。田中教授も「コンクリートは熱容量があるため、外断熱が非常に効果的です。木造ではあまり変わらないのではないでしょうか。もし木造で外断熱ということであれば、木の腐食を避けるためにも、常に乾燥した空気に木が触れるような通気層を設けるのが望ましいと思いますね」と言う。
 いくつかのハウスメーカーに意見を求めたが、「外断熱のいいところだけが強調され過ぎているのではないか」という指摘も多い。
 ある木造2×4住宅のメーカーは次のような意見だ。
 「外断熱にもいろいろな工法がありますが、すべてが正しく施工され、理論的に言われている断熱効果を発揮しているかどうかという点では疑問を感じざるを得ません。当社の場合、独自工法によって次世代省エネ基準にある断熱性能をクリアしており、外断熱と比較してもいまの工法で断熱性能が劣ることはないと考えています。よほどの寒冷地であれば別ですが、本州以南エリアでは性能の差は出ないのではないでしょうか。日本の気候風土を考えた場合あまりに高気密性を追求するよりも、換気量を確保することのほうが大切だと思います」
 外断熱住宅を商品化した、プレハブ系住宅メーカーの担当者は次のような意見だった。
 「外断熱の場合、発泡系材料が用いられることが多く、防火性能が確保できないことと、熱容量が大きいと冷暖房の立ち上がりが悪いことがデメリットと見ています。当社の場合、鉄骨系住宅においては外断熱の導入を進める予定ですが、市場全体ではそれほど普及しないと見ています」
 また、あるハウスメーカーは「外断熱は北海道や東北など寒冷地で必要であって、すべての建物が高断熱・高気密という方向に向かう必要はないと思いますね」と言う。
 このように、外断熱住宅に関しては、推進派、静観派それぞれの立場で、普及への期待感や見通しが微妙に違っている。ただ、省エネルギーで、健康的で、質の高い住まいの供給が求められているいま、より暮らしやすい住宅を追求するなかで、外断熱住宅は一定の市場を形成することは間違いないだろう。
トップページ
   
家づくりの6ポイント
お金
間取り
性能
打ち合わせ
手抜き工事
アフターメンテナンス
   
自然素材のススメ
   
ナチュラルハウスをつくろう
   
樅(もみ)の木の家
   
これからの断熱工法
   
たいほうGallery
 
   
建築屋の独り言
   
ご意見ご感想
   

会社案内

   

お問い合わせは

フリーダイヤル 
0120-102-680

 info@taihou1212.com

   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   

(C)Copy Right 2002-2003 Taihou-kensetu.co.ltd. All Right Reserved